額の整形の医学

● 手術の変遷

「美人は額で差をつける」という事を皆さんご存知でしょうか?実は美人と呼ばれている人は皆額が美しいのです。では美人に見えるカオとはどういうものか、というと顔面を縦3等分した時に頭髪の生え際から眉まで(額)、眉〜上唇まで、上唇からアゴ先までがほぼ1:1:1であるのを美の黄金率に叶っていると言います。この比率だと日本人の場合やや額が足りない人が多いのです。また、本人は自分の横顔をあまり見ていないので分からないのですが、額が坂のように傾斜になって削げた様になっている人が結構います。特に、日本人女性は「可愛く、若く見せたい」ので前髪を下ろしたヘアースタイルが多く、額が「盲点」になっている事が多いのです。目も鼻もアゴも治したのに、何となくパッとしない、どうして、、?、という場合、実は額に問題があるケースが多々有ります.。美しい額とは凹凸が無く均等に肉付きが良くツルっとしており軽く弧を描いている。広さは黄金率に叶っていれば尚良し。額を美しくする事によるメリットは数多くあります。額が狭い、または形が悪いと「原始的な、粗野な、知的で無い、エレガンスさに欠ける」印象になります。随分昔は額のボリュームを出す(オーグメンテンション)する治療するにあたって主に行われていたのがオルガノーゲンやシリコンジェルといった注入療法です。現在は敢えて注入なら、ヒアルロン酸や脂肪注入でしょうが、やはり線状の注入で面として均一でハリのある感じは出せず、以下に書く骨のすぐ上に何を充填する治療がベターと言えます。
現在は額用シリコンプレートや骨セメント、ハイドロキシアパタイトアパタイトを使用するのが医療水準と言えます。

● 額シリコンプレート

鼻を高くする時にシリコンプロテーゼを使用しますがこれと全く同じ素材でシリコンプレートという物が既成品で存在します。薄い板状のシリコンプレートで丁度額と同じ大きさになっています。やはり人それぞれ額の形が違うのでカットしたり削りを入れ加工して使用します。手術は大概局所麻酔で行います。切開を4センチ(cm)程頭髪の生え際後方に入れて額の骨とその上の組織を骨膜下に剥離。そして加工したプレートを挿入します。この時1度で決まれば良いのですが大抵は2〜3回出し入れして削り込みをします。手術後の腫れは、それなりにあるのですが頭皮の腫れは髪で隠れて目立たず、額自体の腫れは骨膜下のため出血が少ない部位なので同部では目立たず、腫れ自体がそう問題になることはありません。後々問題になるのは、頭皮でのハゲと額の皮膚からシリコン板のヘリが目立つ事でしょう。

● 人工骨:骨セメント

人工的に化学配合した硬化する物質(メチルメタクリレート)です。この手術では骨セメント粉と専用溶解剤を混合し粘土状に練り、額に付着させ、手で形を整えます(モデリング)。主に整形外科(骨)分野で人工関節・人工骨頭を骨髄側と固着させるのに使用されています。この骨セメントは人体とは異物である以上に美容目的で使用する場合は「発熱」が大きな問題となります。額に使用する場合、髪の生え際から大分後ろを冠状にグルっと切開(つまり耳の上〜頭頂部〜耳の上)し額の皮を一度全部剥がし前頭骨が丸見えの状態にします。そして練った粘土状の骨セメントの塊を前頭骨部分に乗せ粘土細工の様に3ミリ位の1枚の板状にモデリングしてゆきます。私が危惧するのは、この時かなりの高温が出るのに脳は大丈夫か?という事です。幸いこの手術で脳専門医にお世話になっている方はいないようです。額の骨には前頭洞という空洞があり、また脳は循環する髄液で守られていますから、熱で脳が熱傷を起こすのは考え難いと思います。
この手術は全身麻酔で行いますので術後の気分不快を訴え、嘔吐される方はいます。
額の皮を一度剥がし前頭骨を丸見えにするので術後の腫れも大きく傷も長いので負担の大きい手術ですと言えます。
但し額の形状は良いものです。

●人工骨:ハイドロキシアパタイト

これは人骨と同じ成分で全く無害と言えます。整形外科(骨)や脳外科の分野では特に頚部の骨や頭蓋骨に使用します。美容目的で使用する時は、近年開発された「ペースト状アパタイト」を使用します。頭皮または生え際に加えた約8ミリの切開から特殊器具で骨と額の組織を剥離。その後、粉のアパタイトと専用液を混合し、クリーム状〜やや柔らかめの粘土状にして患部に特殊インジェクターで注入します。注入後はモデリングで均等になるように整えます。固まるのにだいたい10分程かかります。また、これは全く熱を発せず局所麻酔行えて、手術後も気分不快や嘔吐を起こす事は有りません。傷も小さく腫れも最小限で済みます。強度は骨と同じ位〜ややソフトなのですが額の形成に使用する分には全く問題有りません。

●これらの手術の弊害

 シリコンプレートを使用する場合は、メーカーで売っている既製品が、面積的に小さめで且つ板状のため、入れた後、辺縁に軽い段差を生じそれが見た目に分かるのが最大の欠点です。これを治すのに私(木村)を含め浮き上がった縁に脂肪注入をしていた医師はいましたが、やはりキューピーちゃんのような広めの綺麗な額というより、薄いシリコンでは大して変わらない、そして厚くなっていくに従い中央部が突出気味のデコッパチの様相を呈する事が多いものです。
 骨セメントは、私、木村は整形外科において人工関節・人工骨頭置換術で平成6年まで度々使っていましたが、粉と溶剤を混ぜると有機溶剤というかシンナーのような臭いがプ〜ンと立ちこめ、骨髄腔に入れると、よく血圧がドーンと下がり麻酔科医から嫌がられたものでした。また整形外科で下肢のコンポーネント(人工物)に骨セメントを使うと荷重に耐え切れず10〜20年でズレが出てきて、これをLoosening(ルーズニング)と呼び、グラグラしてきたら再置換:Revision(リビジョン)を行っていました。ただ、このセメントも額に使う場合は骨皮質の上に乗せるので有機溶媒の副作用もないでしょうし、荷重のような不可はかからないところですからズレることもないと見ます。やはり実際の問題は片方の耳の上〜頭頂部付近〜もう片方の耳の上まで切開し・頭皮を眉側まで剥がす出血・侵襲の多さ、全身麻酔となること、頭皮の長い傷は、細長い「禿げ」としてずっと残る事が一番の問題でしょう。
ハイドロキシアパタイトの問題は8mmの小切開から行う場合、額の皮膚を介してモデリングするためモデリングが難しい点が唯一の問題です。成績には術者によって差が出ると思います。